北海道を自慢するプロジェクト

青い湖と霧の景
神域の摩周湖へ

SPECIAL ISSUE 2WORDS & PHOTOS : Editorial Staff M

その独特の静けさと怪しい美しさから神秘の湖と呼ばれる摩周湖。摩周ブルーと呼ばれる独特の深みのある藍色や霧の摩周湖と呼ばれるほど高い頻度で発生する霧の情景が、多くの人々を魅了してきました。年間48万人近い観光客がその絶景を求めて、神域に足を踏み入れています。

人を拒む摩周湖

摩周湖は北海道の東部、釧路と網走の中間の阿寒国立公園内にあるカルデラ湖です。周囲約19.8kmの湖で、高さ300m近い断崖絶壁が湖を取り囲んでいます。特筆すべきは透明度。バイカル湖についで世界で2番目に透明度が高く、19m先まで見通すことができるそう。1931年には、41.6mで世界一を記録したこともあります。平均水深は137m。最も深い部分は211mあり、湖底の傾斜が急なことから青色だけを反射させるそうです。独特の藍色の秘密はここにありました。

透明度が高い状態に保たれている理由に、人間が容易に湖に近づくことができないことが挙げられます。湖には川が無く、湖に通ずる道もありません。しかも、ヒグマが生息しているので、危険な一帯です。研究目的以外には立ち入り禁止で、勝手に立ち入ると犯罪者になってしまいます。ちなみに、かつてそのような規制におおらか時代があり、ザリガニを捕獲した人がいました。その大きさが1m近かったそうで、ウソかホントかはわかりませんが、摩周湖の神秘性をあらわす一つになっています。

霧は涙で出来ている?

摩周湖には悲しい伝説があります。アイヌの人々が暮らしていた神話の時代から、摩周湖は人智を越えた存在である山の神の湖として恐れ崇め奉られてきました。山の神とは湖の東側に鎮座する摩周岳のこと。アイヌ語でカムイヌプリ山と呼ばれ、神の山(神々が宿る山)という意味です。その摩周岳の目の前にある、摩周湖唯一の島がカムイッシュ島。アイヌ語で神になった老婆という意味です。なぜ、こんな名前で呼ばれるようになったのでしょうか。

かつて、アイヌの部族(コタン)同士が、イヨマンテ(熊祭)の夜に争いを起こし、一方の部族は殲滅させられてしまいました。その際、かろうじて老婆とその孫が逃げ出すことができたのです。しかし、老婆は逃げている最中に孫を見失ってしまいました。孫を捜し求めて、必死の思いでたどり着いたのが摩周湖でした。疲れ果てた老婆は神域に足を踏み入れたので、カムイヌプリ山に休息を請い、許されて休むことができました。しかし、疲労困憊で動くことができません。孫を見失ったことを思い出しては悲嘆にくれ、その場所から動くことができないままに孫を待ち続けて、とうとうカムイッシュ島なってしまったそうな。摩周湖に人がやってくる度に、孫がやってきたのかと思い、うれし泣きをするので、霧が多くなったと伝えられています。悲しい伝説ですね。ちなみに、現代版の伝説(ジンクス)もあります。晴れた摩周湖を見ると初めて訪れた未婚者は結婚がなかなかできないとか、社会人は出世できないと言われています。真相は不明ですが、残念ながら、老婆に歓迎されていないということなのかもしれませんね。

幻の霧

年間約100日近くも摩周湖で霧が発生するそうです。特に霧が多いのは6〜7月。見られるのは早朝。発生する霧にも種類がいくつかあるのも面白いところです。代表的なのは湖水が冷やされて発生する霧。その他には、太平洋の海水が冷やされて発生する霧が摩周湖に流れこんできます。中でも、年に数回しか見る事ができないと言われているのが滝霧。NHKスペシャル「幻の霧 摩周湖 神秘の夏」でも特集されたようにスゴい迫力があります。三陸沖で発生した雲海が釧路を経由して摩周湖に進入してくるというもの。このようなスペクタクルは、まさに神域だからこそ発生する景色と思わざるを得ないでしょう。

摩周岳とカムイッシュ島と水たまり

伝説にもなっているように、摩周湖の見所はやはり、摩周岳とカムイッシュ島です。それらが組合わさった景色を違う角度で楽しめるように摩周湖の周りには第一展望台、第三展望台、裏摩周展望台と3つの展望台があります。かつて、第二展望台もありましたが、いつのまにか廃れてしまったとか。第一展望台は有料で、その他は無料。個人的には第三展望台からの眺めが美しいと思います。摩周湖だけでなく、逆側の屈斜路湖と硫黄山方面の景色もジオパークのような大地の美しさを感じるので、心を揺さぶられるのではないでしょうか。

実は摩周湖、名前に湖とついていますが、河川法上では湖ではないそうです。水たまりとも言われています。元々は宮内省管轄の御料池だったので、池と呼ぶべきなのかもしれません。ただ、水たまりにしても、池にしても、スケールが大きなことだけは間違いないですね。神々のスケールに見合った池や水たまりと考えれば、おかしくはないかもしれません。神秘的な場所にふさわしく全てにおいて規格外なところが、摩周湖の素晴らしさです。

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